年金の『壁』211万円の是非

2024年3月18日

AERA(2024年3月18日号)の「年金の『壁』211万円の是非」という記事に、私のコメントが載りました。

年収106万円を超えると、扶養をはずれ社会保険料を払わなければならず、かえって働き損になるので、年収106万円を超えないよう勤務時間を調整しているパートタイマーが多いことが問題になっているとマスコミに報道されました。

実は、年金にも「211万円の壁」があるということはご存じでしょうか?
年金の額が211万円を超えると、住民税を払わなければならないので、211万円を超えないよう調整する人がいるというのです。
それでは、どのようにして年金額を調整するのでしょうか?
年金の「繰上げ制度」を利用すると、ひと月あたり年金額が0.4%減るという仕組みがあります。
本来65歳からもらえる老齢年金を1年早く64歳からもらうと、4.8%減額します。
仮に65歳からもらえる老齢年金が220万円の人の場合、64歳からもらえば209万円になります。すると、211万円未満になり年金には住民税がかからないことになります。

しかし、年金額を減らしてまで住民税非課税にするのは本末転倒です。
減った年金額は一生減ったままですから。
セカンドライフを豊かに暮らすライフプランを考えた場合、むしろ年金を「繰り下げ」てもらうことを検討したほうがいいと専門家がアドバイスしています。
65歳からもらえる老齢年金を繰り下げてもらうと、ひと月あたり年金額が0.7%増えます。このような仕組みを利用したほうが、長い人生を考えた場合は有利になるということです。
記事には「FPの澤木さんは、繰上げで年金額が増える効果を強調する」と書いています。
「税金や社会保険料は増えますが、手取りが増えることが大きいのです。例えば、年額200万円の年金を見込める人が、受給を5年遅らせて70歳からもらい始めた場合、100歳まで生きると65歳からもらい始める人より可処分所得が1,000万円も増えます」とコメントしています。

目先の税金や社会保険料が増えることを嫌って、拙速な判断を行うと人生100年時代を考えた場合、後悔することになるということです。

それにしてもどうして日本人は税金や社会保険料が嫌いなんでしょうかね?
税金や社会保険料をたくさん払えば、社会福祉はよくなるはずなのに・・・?

税金や社会保険料が公正に使われていないという政治への不信感があるようです。
また、税金は罰金と考える人が多いせいではないかと思います。
長い歴史の中で、日本人はお上を信用できなくなったしまったのですね。
とても残念に思います。